批評|解釈と評価

Criticism|Interpretation and Evaluation

鑑賞者は芸術作品を知覚し、解釈し、評価する。批評[criticism]は、芸術鑑賞におけるさまざまな判断を伝達する行為として理解できる。批評とはなにを目的とした、どのような営みなのか。芸術作品のカテゴリー(ジャンル、形式、様式、メディアなど)は、その批評にどう影響するのか。芸術作品の正しい意味や価値は定められるのか。作者の意図はどこまで/どれだけ関与的なのか。

2023/01/01

It is widely acknowledged that categories play significant roles in the appreciation of artworks. This paper argues that the correct categories of artworks are institutionally established through social processes. Section 1 examines the candidates for determining correct categories and proposes that this question should shift the focus from category membership to appreciative behaviour associated with categories. Section 2 draws on Francesco Guala’s theory of institutions to show that categories of artworks are established as rules-in-equilibrium. Section 3 reviews the explanatory benefits of this institutional theory of the correct category.

2022/12/25

芸術作品の意味を決定するものはなにか。芸術の解釈は何を追跡するのか。本稿では、芸術作品の解釈をめぐって近年登場した制度的アプローチについて検討する。キャサリン・エイベルによれば、フィクションの実践は「想像の伝達」をめぐるコーディネーション・ゲームであり、フィクション制度のルールが虚構的発話の内容を割り当てる。第1節ではエイベルの理論を概観し、第2節ではその枠組みに対する懸念と反論をいくつか提示する。私は、エイベルの反意図主義的な議論が、その根底においては意図主義的なものであり、その射程も限定的であることを明らかにする。エイベルの理論は、制度がルールであるだけでなく均衡でもあるという事実を十分に活用できていない。フィクションの価値に関しては疑わしい帰結を伴い、フィクション実践に関しては疑わしい前提を伴っている。これらの点から、芸術の解釈と作者の意図をめぐる議論に対する新たな反意図主義的説明として、エイベルの理論は望ましいものではない。第3節では、制度という装置をエイベルと共有しながらも、芸術作品の内容や解釈については異なる議論を展開するひとつの代替案について述べる。芸術作品の経験価値を追求・最大化するなかで、一連のふるまいは「均衡したルール」となり、芸術の内容の一部を割り当てることになると主張する。

2022/06/04

作者の意図が作品の意味や内容を決定するという見解は、分析美学において根強く支持されてきた。本発表では、キャサリン・エイベル『フィクション:哲学的分析』によって提示された代替案を検討する。エイベルによれば、フィクションとは作者と鑑賞者で想像を共有するゲームであり、その根幹をなす「想像の伝達」という課題を解決するのは、作者の内的な意図ではなく、作者と鑑賞者の共有するフィクションの制度、そこに含まれる内容決定ルールである。エイベルの制度的アプローチには妥当でない前提および帰結が伴うことを指摘し、鑑賞者同士の協調に依拠した別の制度的アプローチを提案する。